小麦色の少女との出会い

12月 26th, 2011 | admin

 初夏の江の島、俺は一人で浜辺にいた。
 去年、ここで彼女と出会ったのだ。
 俺も、彼女もサーファーだったというのか、今も俺はサーファーだけれどもね。
 彼女は長い黒髪を、いつも後ろで束ねて、小麦色の可愛い頬にエクボを作って「おはよ〜、今日もいっちょうやろうね」と、サファーらしかぬ言葉でその場にいる全員を和ませてくれていた。
 俺は彼女に恋をしはじめていた。
 しかし、彼女は気づいてはくれていないようだった。
 それから少しして、彼女の姿が見えなくなった。
 あれほど毎週のように来ていたのに、そしてボードを新調したと喜んでいたのに、なんで姿を見せなくなったのだろう。
 俺は何か気の抜けたビールを飲む様な感覚で、彼女のいない海でサーフインをしたが、何の楽しみもなかった。
 ただ、彼女への想いが募るばかりだった。
 なんで、彼女は姿を見せないのだろうと、これからずっと彼女の事を想わなければいけないのだろうか。
 二週間ほどサーフィンを休んで、三週間目に久しぶり出かけてみることにした。
 朝三時には車にボードを積み、三時半に世田谷の家を出発した。快晴だった。
 やがて東の空に地平線がゆっくりと、その稜線を表し始めていた。丹沢の山やまなのだろうか、美しい景色だ。
 それを見て、俺は彼女に会える予感がしていた。
 絶対に会えると、俺は自分に言い聞かせていた。
 あの長い黒髪を後ろで束ね、一年中小麦色をした可愛い頬をした顔をほころばせて「お〜っす、お早う。ちゃんとウンコしてきたかな?海ん中でしちゃ〜駄目だかんね〜」などと明るく振舞う彼女に会えると、絶対にそうだと、俺は思った。
 俺はウエットスーツに着替えて、ストレッチをしたりと言う一連のアップをしていた。
 もう少しでアップが終わると言う時に「よ〜、みんな、久しぶりだね〜。みんな元気そうじゃん、そのみんなの元気を分けてくれよ〜」と言う、彼女の声が聞こえた。
 「どうした〜、なんでお前が元気を要求するんだ。逆じゃね〜か、今まで俺たちは、お前の元気をもらって波に向かって行ったんだぜ。まあ、いいや。困ったときはお互い様だぜ。とりあえず、俺の元気はお前にやる。いいか、受け取れ」と言って、俺は彼女に拳を突き出し、ガッツポーズをした。
 彼女は「お〜、確かに受け取ったぜ〜、ありがとう。波に負けないでいっといで〜」と、これもサファーらしからぬ言葉で、俺を送りだしてくれた。
 そして、今は毎朝「それじゃ〜、今日も世間の荒波に負けないように頑張っておいで」と言って、優しく俺の頬にキスをしてくれている。
 小麦色の少女は、今、俺の妻になっている。相変わらず、小麦色なのは地肌の色だったようだが。

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